#016 勝利があったから、敗北で学べる。

「勝って反省できるって大きいよ。めっちゃ大きい」。
開幕戦勝利後に副キャプテン・川嶋勇人が本音を漏らした。劇的な開幕勝利から1日休みを挟んで挑むGAME2。負けてもいい試合など1試合も存在しないが、仮に敗れたとしても勝率5割で次に進める。
心理的にポジティブでいられる状況を開幕戦で得た。
大きな1勝を抱えた状態で迎えた試合。結果は、77-81で滋賀に敗れた。
GAME1同様、序盤からリバウンドで滋賀を上回り、インサイドから得点を重ねたが、ターンオーバーで相手に流れを与えてしまい、思うように主導権を握れない苦しい展開。しかし、後半は前田悟やデメトレ・リバースの3ポイントシュートで追い上げをみせ、4Qにはどちらに勝利が転ぶかわからない状況まで詰め寄ったが、一歩及ばず。悔しい惜敗。
この悔しい敗戦から何を学んでいくのか。残り58試合を見据えていく。

試合終了後、いつもより少し長い間を開けて、選手たちが待つミーティングルームに伊佐勉HCがやってきた。選手に何を伝えるのか。試合後のミーティングでは、まずコーチングスタッフ同士が会話をし、整理をしてから選手のもとにやってくる。
「お疲れさまでした。プレータイムに関係なく、みんなそれぞれやるべきことはわかっているけど、ちょっとクオリティーがまだまだこれからという感じ。開幕して1試合目のチームだなって。そこをこれから少しずつ詰めていきましょう。まだまだ荒削りな部分があるから。練習しながら、ひとつひとつ成長していこう。負けてしまったけど、まずは休んで。また週末にチャンピオンチームが来るからね。僕らがどれだけできるか、チャレンジしましょう」。
伊佐HCは穏やかな口調で選手たちに語りかけた。

ミーティング終了後の選手たちの様子は思った以上にスッキリとしている。率直な感想を岸本隆一に聞いた。
「必要以上に悲観的にもなっていませんし、しっかり反省っていうところですね。ポイントになるタイミングと言いますか、試合の中で勝利に結びつけるためのポイントがけっこう多かった試合だったから結果的に負けて悔しいんですけど」。
岸本が言うように、良い流れが生まれそうで、今ここで押し切りたいという場面が試合中に何度かあった。そこで、いまいちグッと押し切れなかったこのゲーム。相手が開幕戦で負けていることもあり、相当なエナジーを感じた。そういった状況を岸本は、どう受け止めたか。
「全然起こり得る状況だと思いますし、特に後半。3,4Qですね。4Qに入ってくるとある程度の疲労も出てきますし、そこでどうやって解決していくかと言ったら、僕はもうコミュニケーションしかないと思っています。コート上のライブ感のある生きたコミュニケーションを取りながらプレーしていく必要がもっとあったかなと。そこは個人的な反省ですね。
ただ、すごくポジティブな面としては、ディフェンスが機能しなかったところを後半はチームみんなでコミュニケーション取りながらアジャストできた。そこはGAME1にはなかった部分だと思うので、もっと早めの段階でアジャストできるように、次に向けて練習していきたいと思います」。
生きたコミュニケーション。岸本が放った言葉にシーズンを戦う難しさを実感した。このチームは始動した頃からコート上でしっかりとトークすることを大切にしてきた。プレシーズンマッチでもその様子が垣間見えるシーンがいくつもあった。それでも開幕前と開幕以降では話が違う。本気の相手がいて、本番が始まってからでないと改善できない修正箇所がある。練習ではなく、試合だからだ。その点に開幕2試合目で気付けたことはチームにとって大きいことなのかもしれない。


試合後も会場に残ってコミュニケーションを取り続けるコーチングスタッフがいた。
昨シーズン、悔しい思いをし続けた上杉翔ACと今シーズンより加入した塩野竜太ACだ。両者は今回の負けに悔しさを滲ませながらもポジティブに捉えていた。
上杉ACの言葉には熱がこもっていた。
「選手たちはすごくファイトをしてくれましたし、昨日も一昨日もなかなかの点差から逆転のところまで戦ってくれました。今日もすごくファイトしてくれていた。
一昨日の開幕戦のゲームも昨年だったら後半に相手に離されて試合が終わってしまったケースだった。でも今年はみんな『まだいけるよ』っていう声掛けもありましたし、全員が本当に焦らずやってくれてたなって。そう思います。
まだ始まって2試合なんで、本当に細かいところのミスがありましたけど、そういう部分はこの試合で学べた部分もすごくあります。それを少しずつ、毎試合良くしていくこと。
最終的に良いチームになっていけばいい。
幸いにも、もう1回滋賀と対戦できます。チャンスがあるので、その時にしっかりとリベンジできるようにこれから成長していければいいかなと思っています。
次の長崎戦も特別に「これ!」みたいなものっていうよりも、やっぱり自分たちのやるべきことをどれだけ。遂行できるか。そこがすごく鍵になってくると思います。この夏、取り組んできたことが、どれだけ試合の中で表現できるか。フォーカスしてやっていきます」。筆者の手を強く握り、会場を後にした。





今シーズンより、シーホース三河から加入した塩野竜太ACに話を聞いた。コーチングスタッフとして、チャンピオンシップを経験した塩野AC。そこに辿り着く難しさを肌で実感してきた一人だ。
開幕2戦を終えて何を感じたのか。胸の内に迫った。
「昨日も苦しい試合でしたし、今日も最後まで接戦で選手たちは頑張ってくれました。そこで選手たちの手助けになれず、勝たせてやれなかったことが不甲斐ないです。問題に対して早く解決策を提示してあげれなかったので、そこに危機感を覚えています」。
その表情からは悔しさが滲み出ていた。決して甘くない。トップの戦いを知っているからこそ、開幕を戦って感じたことがある。それは自らへの危機感だけではなかった。
「2連勝することって本当に簡単なことじゃない。すごく難しいこと。今日は敗れましたが、1勝1敗という最低限の形で次を迎えられるので、悲観はしていません。
夏から積み上げてきたものが本当に良く試合で表現されていて、コンディショニングの面もですし、ハードにディフェンスしてオフェンスに繋げること、オフェンスリバウンドも2試合通して獲得率が高かった。
このチームはシーズン初めの段階で土台になる部分がしっかり作られています。頑張ること。そして、身体の状態。そこはものすごくポジティブですよ。残り58試合でプレーオフに進むために、この2試合から何を学ぶのかが重要。どうやって次に生かすのか。その学びの繰り返しの結果、後半に他のチームと比較しても実力をつけることができていれば良いと思っています。
1番成長したクラブと言えるように、思ってもらえるように、全員で進んでいきたいです。
今日も『プレーオフかな?』というくらいの熱量や緊張感と「負けてたまるか」という気概を感じました。
僕は京都ハンナリーズが、プレーオフを目指すにふさわしいチームだと確信していますし、そうなるようにベストを尽くしていきます」





冒頭の川嶋の言葉をもう一度、思い出してほしい。
「勝って反省できるって大きいよ。めっちゃ大きい」。
なぜ、試合に敗れてもなお、ポジティブな状態を保ち、前を向くことができたのか。それは開幕戦で意地を見せ、絶対に諦めずに全員で掴み取ることができたからだ。その1勝が良い意味で心に余裕を持たせた。
スポーツの業界では、過去を振り返ることは良くないこととして扱われる印象がある。
「過去を振り返るな」
「今日の結果は忘れろ」
「前を見ろ」
果たして本当にそうなのか。
一昨日の劇的な勝利と逆転しきれなかった今日の悔しい敗北。どちらもこれから強さに変えていくための学びであるならば、喜んで振り返っても良いのではないだろうか。
開幕戦に勝ったから、今日の敗戦で学びを得ることができた。
すぐに報われる努力はない。試行錯誤して得るものだからこそ喜びも大きい。
丁寧に、全員で、本当の強さを作っていく。

取材・執筆 / 京都ハンナリーズ広報部 笠川真一朗
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