#021 真のエナジー

5ファウルでコートアウト。しかし、コートを去るマイケル・フィリップスには、客席から温かくて大きな拍手が送られた。
長崎ヴェルカとのGAME2。京都ハンナリーズは攻守で圧倒的な強さを見せ、90-65で快勝を収めた。
試合序盤からアグレッシブなプレーで主導権を握った。チームの平均リバウンド数「48.5本」が示す通り、インサイドでの献身的な奮闘が光り、セカンドチャンスを確実にものにしていく。
ディフェンスでもゲームを通して高い集中力を維持し、メンバーを欠く長崎ではあったものの、その攻撃をわずか65点に抑え込んだ。
この勝利の立役者となったのが、インサイドの要であるマイケル・フィリップス。「マイキー」、「モーター・マイク」の愛称で親しまれる男の気迫溢れるプレーに会場は熱狂。激しいマッチアップの末に5ファウルで惜しくもコートアウトとなったものの、彼の献身的なディフェンスと身体を張ったリバウンド、そして豪快なダンクシュートはチームに計り知れないエネルギーをもたらした。
コートを去るフィリップス選手に対し、ブースターで埋め尽くされた客席からは、その闘志を称える温かくて大きな拍手が送られ、アリーナは感動的な一体感に包まれた。


マイキーにとって、日本は特別な場所だ。3年前、大学の大会で来日した際に日本が大好きになり、「いつか日本でプレーすることが自分の夢になった」と語っていた。
フィリピンの大学での数々のタイトルやMVPを引っ提げ、ここ京都でプロとしてのキャリアをスタートさせた彼は、今まさに「夢の時間を生きている真っ最中」だと言う。
チームに合流したその日から覚えたての立派な日本語でコミュニケーションを取り、明るい性格でチームに溶け込む。練習に入るとどんな些細なことでも全力で取り組み、不器用ながらもチャレンジすることを恐れない。疑いようのないまっすぐな人柄だからこそ、周囲の人間もマイキーに積極的に手を差し伸べる。彼の努力や気持ちに多くの人が心を動かされた。

試合後の村上直GMもそのひとりだった。「すごく良かったね。ただ、バスケットが上手とか、得点したとか、そういう次元の話じゃない。観ている人たちの心を大きく動かすようなプレーは彼にしかできない。それはチームにとっても非常に大きい。スタッツに残らない献身性やエナジー。今日なんか勝っている場面でも飛び込む。みんな感じるものがあったんじゃないかな。チームとして戦う姿勢を体現してくれている。マイキーが活躍したらみんなすごい喜ぶ。鳥肌が立った。今までにないエナジー。それで会場を沸かす。感動したよ」。
今日、試合会場で初めてバスケットボールを観た方もいるかもしれない。ルールを知らなくても、今日のマイキーの迫力は確実に伝わったはずだ。マイキーにしかない何かが確かに存在している。
副キャプテンの川嶋勇人もマイキーの活躍に興奮を隠せない。「嬉しすぎるし、感動した。開幕からプレータイムが延びなくて悔しい気持ちもあったと思う。でも腐らずに前だけを向いていて頑張ってるし、今日の活躍は自分のことのように嬉しかったな。勝っていてもあのエナジー。特別なエネルギーを持っている。ずっと同じインテンシティーでプレーを続けるってすごく難しいから。最後のインタビューも斬新やったよね。質問されてから話すのが普通やと思ってたけど、自分から喋り出して、自分で終わる。MCが『以上、マイキーでした!』で終わるインタビューって見たことある?長くプロでプレーをしてるけど、概念を覆された気持ち。とにかく楽しかった(笑)」。
36歳のベテランをここまでワクワクさせるフィリピンの逸材。今後の成長を末恐ろしく思う。

日頃からマイキーにマンツーマンで指導にあたっているデイビッド・ドブラス プレイヤーデベロップメントサポートスタッフは、今日の活躍をどのように見ていたか。「個人的には今日の活躍に大きな驚きはなかったよ。彼は本当にポテンシャルがあるプレーヤーだから。今はまだプロとして多くのことを学んでいる状態。まだまだ時間はかかると思うけど、苦労しながらも確実に前に進んでいる。長いプレータイムを獲得して、良い部分を発揮できたことを私も嬉しく思う」。
日々、マイキーの成長を見続けている男は冷静に振り返った。続けて、今後求めることを話してくれた。
「もう少し落ち着きが必要。今は何でも知りたがって、何でもやりたがる。それも非常に重要なことだけど、まずは自分の役割を知って、その役割に対して全力を注ぐこと。まずはそこを求めていて、少しずつ進歩していってくれたらと思っている。彼は本当に特別なモノを持っていて、それは練習でどうにかできることではない。彼のエナジーは周囲の多くの人に伝播していく。これはとても素晴らしいことなので、これからも続けていってほしい」。
Bリーグでのプレー経験が豊富で、どのように戦ってきたかを肌で実感しているドブラスだからこそ、その言葉は重い。

全体練習が始まる前からマイキーと積極的にコミュニケーションを取るなど、常にアドバイスを送り続けるチャールズ・ジャクソン選手も今日の活躍を喜んだ。
「マイキーはやるべきことをしっかりやって、素晴らしい活躍をしてくれた。チームのためにエナジーを出して本当に素晴らしかった。僕が少し教えるだけでも彼はすぐに多くのことを吸収して成長を続けている。仕事をまっとうしている姿を見ていると、自分もしっかり頑張ろうと思えるし、チームは今、みんなが活躍している。今日のように仲間を信じて戦っていきたい」。
本当に多くの人がマイキーの活躍に心を動かされた。それはファン・ブースターの皆様も同じ気持ちだったと確信している。

当の本人の気持ちはどうだったのか。試合後の胸の内に迫った。
「とても楽しかったです。チーム一丸で素晴らしいスタートを切れました。ファンの応援でさらに元気が出ました。重要なのは感情の起伏を抑え、安定した状態を保ち、改善し続けることだと考えています。今日は特に1Qのディフェンスが良く、相手を2点に抑えました。少しずつですが、チームとして着実に前進しています」。
微笑みながらゆっくりと感想を話した。


そして、自ら話を続ける。支えてくれる周囲への感謝の言葉だった。
「ファンの応援は本当に素晴らしいです。SNSでのコメントやプレゼント等、いつでも大きな愛を感じています。みんなのためにプレーできるのは光栄です。まだまだ学ぶことも多く、ミスもしますが、コーチ、チームメイト、そしてファンの皆様が支え続けてくれています。京都ハンナリーズというコミュニティーでプレーできることはとても光栄なことです。
オフコートの通訳の美野さん(大嶺)、サポートスタッフのドブラスさん、年齢も近くていつも多くのコミュニケーションを取ってくれる主道(内木AC)。そしてチームメイトや多くのスタッフが自分の成長のために、力を注いでくれます。それは本当に恵まれているなと感じています。
特にドブラスさんは試合の翌朝でもワークアウトに付き合ってくれます。この環境とサポートがあるからプロでの挑戦も怖くありません。チームカルチャーが大好きで、誰にでも安心して質問できます。皆が辛抱強く接してくれる最高の環境です。
チームは家族のように支えてくれます。高いスキルに加え、プロとしての心構えやメンタルも教えてくれる。試合翌日でもコーチやベテランがトレーニングに付き合うなど、とても献身的です。誰にでも意見・相談もでき、ミスを責めず成長を待ってくれます。
何度も言いますが、本当に素晴らしい環境です」。
こちらから質問をしなくても、自らの気持ちをオープンに話してくれる。実直な性格はコートでもオフコートでも変わらない。そんな姿もマイキーの魅力だ。




最後にマイキーに目標を聞いた。
「チームの目標はプレーオフ進出。そのために、一戦一戦を大切に戦います。個人的にはコーチの教えを最大限吸収して、どんな形でもチームを助けたいと思っています。毎試合すべてを出し切り、その過程を楽しみたいです。まさに、「共に、登る。」です。一緒に頑張りましょう!」。
開幕前にマイキーが言っていたことを思い出した。「人が嫌がる細かい仕事を全部やってチームの勝利を助けたい。床に飛び込んでルーズボールを拾い、リバウンドを取り、ディフェンスをするのが僕の役割」。
自分と約束した目標に向かって一心不乱に走っていく。その道中には思いがけない困難や周囲の目や声が待ち受けているかもしれない。それでもマイキーは気にせず走っていく。
家族全員がずっとそばで見守ってくれているから、失敗しても大丈夫。
だから、全体重を乗せて全力で飛び込むことができる。
マイキーだけが持っている「真のエナジー」は、家族の優しさでより輝きを増している。

取材・執筆 / 京都ハンナリーズ広報部 笠川真一朗
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KYOTO HANNARYZ




















