#024 ひとつの大きなファミリー

「ミーチ、『京都ハンナリーズに来てよかった』っていつも言ってるんです」。
そう話すのは今シーズンから京都ハンナリーズに加入したオフコート通訳・大嶺美野だ。
富山との試合に勝利した後、信頼し合っているふたりが笑顔でハイタッチを交わす姿に筆者は胸を打たれた。

京都ハンナリーズでは外国籍選手本人、そしてその家族やパートナーがこの京都の街で快適に生活が送れるようチームスタッフが様々なサポートをしている。その中心にいるのが大嶺だ。外国籍選手と積極的にコミュニケーションを取り、困っていることはないか。何か助けは必要か。その他にも通院関連や各種申請類など、彼女のサポートは多岐に渡る。

昨日の富山戦の14PTSをはじめ、開幕から慣れない日本の舞台でも冷静にプレーし、チームの勝利に貢献しているデメトレ・リバース。
「ミーチ」の愛称で親しまれているリバース。彼はいつ何時でも冷静に自らの役割を遂行し、コート外では笑顔をよく見せる心優しい男だ。京都に来てまだ数ヶ月だが、既にチームに馴染んでいる。開幕前もシーズンインを心待ちにしている様子が伺えた。
「すごくワクワクしているよ。ここまではとても順調。僕たちは本当にハードに練習してきたし、お互いを知り、チームの原則を叩き込み、自分たちの軸となるアイデンティティを見つけることができた。他チームとの対戦で自分たちの力を試す機会もあったし、シーズンを迎えてホームのファンの前で良いパフォーマンスを見せる準備はできていると思う。スタートするのが楽しみだよ」。その言葉通り、開幕2戦目から18PTSを記録するなど、その実力を遺憾なく発揮した。


常に冷静に。その姿は多くの人々にも届いているはずだ。本人もその冷静さをアピールポイントとしている。ヨーロッパで数々の強豪クラブを渡り歩き、多くのチームの戦術にフィットしてきた。その経験がミーチを強くさせていた。
「そわそわする気持ちやワクワク感、本当に色んな感情が入り混じって抑えるのが大変ではあるよね。でも、いざ試合が始まってしまえば、自分の居心地の良いゾーンやペースを見つけられるんだ。結局のところはバスケットボールだからね。僕も仲間たちもずっと長くやってきたこと。だからコートに出てしまえば本能が働き始めるし、これまで準備してきたことすべてが自然と身体から出てくるようになるよ」。

富山戦も冷静だった。前半、自慢の3ポイントシュートを3本放ったが、リングに沈めることができず、見せ場を作ることができなかった。しかし、後半は要所で見事なシュートを見せる。4本中3本の3ポイントシュートを決めて、チームの勝利に大きく貢献。

「自分がミスをしたり、シュートを外したりすることもある。それでチームにネガティブを与えてはいけない。だから常にエナジーを出して、かつ冷静でいることが大切。そうしていれば、必ずまたチャンスがやってくる」。
先週、ミーチと話をした時に彼が言った言葉を試合中に思い出した。自分のやるべきことを、結果に左右されずに、ただひたすらにやり続ける。その結果が今日の後半にも繋がった。そして、勝利後に試合配信番組のインタビュー選手に選ばれた。いわゆる、MVPだ。

そのインタビュー内でのコメントに、ミーチという人間そのものが表れていた。
「スタッフやチームのサポートが素晴らしいです」。どんな時も他者を思いやり、リスペクトする。得点が取れたか。派手なプレーを魅せられたか。そんなことは彼にとって重要なことではない。大切なのは、「家族のために戦えたかどうか」だ。インタビューが終わってロッカーでファミリーが待つ。全員が盛大に出迎えた。
いかにミーチが愛されているか。よく理解できるシーンだった。大嶺通訳もにこやかな笑顔を見せていた。
開幕直前、ミーチに聞いたことがある。単刀直入に「京都ハンナリーズのどこが好きなのか」と。
彼は言った。
「選手、スタッフ、コーチ陣、みんなが作り出してくれたこの雰囲気と環境のおかげで、ここにいられるのを心から楽しめている。プレーの時だけじゃなくて、コート外でもね。みんないつも笑顔で優しい。そして、良いエナジーに溢れている。時にはジョークを言い合ったりして。ひとつの大きなファミリーのように感じられるんだ。だからこのチームに来て良かったと思っている」。

ミーチのプレーを陰でそっと支える人がいる。そして、そのサポートに結果で応えようといつも全力で走るミーチがいる。
「ファミリーファースト」。本当の家族のように。その家族のためなら、何でもする。村上直GMが大切にするテーマだ。
チームは今、好調の中にいる。その要因は戦術が良いからなのか。技術や才能、経験に恵まれた選手やスタッフがいるからなのか。
それも素敵なことだが、どれも違う気がする。
好調の要因はもっと根底にある。
「本当の優しさを知る人間が沢山いるから」だ。


取材・執筆 / 京都ハンナリーズ広報部 笠川真一朗
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