#027 ヘッドコーチチャレンジ

3連勝とここまで好調の京都ハンナリーズ。ホームに横浜ビー・コルセアーズを迎えた一戦は最後の1秒まで勝敗の行方が分からない、息を呑む大激戦となった。
最大10点のリードを奪う理想的な立ち上がりから一転、横浜BCの猛反撃に遭い逆転を許すなど、苦しい展開が続くも、チームは最後までエナジーを失わなかった。
目の負傷を抱えながらもゴール下で身体を張り続けたチャールズ・ジャクソン選手が23得点を挙げる大奮闘。
そして最後まで緊迫した局面が続くものの、勝利への執念を結実させ、74-73の1点差で劇的な勝利を収め、これでチームは4連勝。6戦を終え、5勝1敗とした。

試合後のロッカールームで伊佐勉HCはひとりのチームスタッフの名前を挙げた。「選手も我慢して戦い続けた結果だけど、最後の審判へのチャレンジは、なずなさん。なずなさんが『いきましょう』と言ってくれた」。松浦なずなヘッドビデオコーディネーター兼データアナリストの名前を挙げ、全員が彼女に賞賛の拍手を贈った。

残り数十秒。1点を争う場面。審判へのリクエストがなければ、今日の試合に敗れていたかもしれない。残り20秒の場面でのヘッドコーチチャレンジが勝負の明暗を分けた。
残り0:21で70-73。チャールズ・ジャクソンがシュートモーション中にファウルを受け、フリースロー2本を獲得する。そして、ここでヘッドコーチチャレンジ。プレーが検証された結果、相手選手のフレグラントファールにより、フリースローを2本放った後に京都ボールで試合がリスタート。チャールズ・ジャクソンが2本しっかりと決め切り、72-73。その後、岸本隆一がファウルを受け、フリースローを2本決め切る。残り0:15で74-73。そのリードを守り抜き、試合を制した。
あの時、松浦なずながいなければ。試合はどうなっていただろう。今日の試合後の歓喜が溜息に変わっていたかもしれない。

バスケットボールチームにおけるヘッドビデオコーディネーター/データアナリストの存在はとてつもなく大きい。チームを勝利に導くための「戦略の心臓」と言っても過言ではない。現代のバスケットボールは「データスポーツ」と言われるほど情報戦が激化しており、その分析がヘッドコーチの戦術決定や選手のパフォーマンスに直結する。
相手のスカウティングに自チームの分析、そしてそれをコーチ・選手にしっかりと落とし込めるように情報を選択し、整理をする。

このBプレミアのスケジュールにおいて、彼女たちスタッフ陣の仕事は非常にタフだ。アウェイゲームの移動でもパソコンを開き、試合後でさえ、一喜一憂する暇もなく、すぐに次の対戦に向けて準備を進める。
しかし、そんな多忙の中でも疲れている素振りを一切見せない。今のチームの好調を支えている大きな要因はスタッフ陣の「仕事に対するプロフェッショナルマインド」そして「勝利への情熱」だ。チームのためならどんな犠牲も払う。その力強さがチームを支えている。どの選手に聞いてもそう答える。「本当に一生懸命にチームスタッフが寝る間も惜しんでスカウティングして戦術を用意してくれています。これは当たり前じゃない。それを遂行するのが自分たちの仕事。だから勝たないといけないです」。ある日、澁田怜音がそう話していた。

伊佐勉HCは、「今日だけじゃなくていつも本当に良い仕事をしてくれています。本当に。次、次と、いろんな準備をしてくれてチームは助けられていますし、今日こういうことがあって掴んだ勝利はとても大きいものだと感じています」。と、日頃からチームを共に創り上げる仲間を誇った。
そして、試合後に松浦に話を聞いた。人見知りで照れ屋な一面がある彼女。最初は断られたが、しつこくお願いをした。「夏から取り組んできたことが積み重なって、形になっていることがとても嬉しいです」。と小さく微笑んだ。
続いてチャレンジの場面。当事者はどう感じていたのだろうか。
「チームとして、チャレンジのタイミングは終盤に使うようにしています。それがチームルールとしてあるので、コーチ陣と話をして、重要な場面や本当に必要な状況で使うように。今日の場合はここはチャレンジするタイミングだと思ったので、しっかりともう一度確認して『(チャレンジ)したほうがいい』と判断して伝えました。ファウルが認められて『よかったぁ』とホッとしました」。安堵の表情を浮かべていた。

タフなスケジュールが続き、スタッフ陣にも疲労はあるだろうが、常にチームのことを想う。「私たちが用意したものが選手にとって理解しやすいものであるように、吸収しやすいように。試合前日、試合当日、状況によって伝える内容とかもコーチ陣全員が意識しています。選手たちもタフな試合が続く中で、共有した情報をしっかりと遂行してくれているので、信頼しています」。と選手たちへの労いの言葉を口にした。そして、彼女が最後に伝えてくれた言葉にすべてが詰まっていた。「試合に勝てたら純粋に嬉しいですし、京都ハンナリーズでの仕事はとても楽しいです」。

「働きやすさ」が謳われるこの時代。スポーツの現場はそれに逆行しているかもしれない。でもそれ以上の何かが、人生にとってかけがえのない何かが、ここにはある。
それは選手もチームスタッフもフロントスタッフも同じ気持ちだ。正直、全員疲れていると思う。でもそれを誰も口にしない。みんなが頑張っていることは、言わなくとも全員が理解し合って、支え合っているからだ。
チームが良い雰囲気で試合に挑めるように、フロントスタッフもこの試合に向けて、深夜に試合会場の設営を行った。その準備に対して選手もスタッフに感謝の気持ちを伝えてくれる。
戦っているのはひとりじゃない。みんなの想いがこのアリーナに詰まっていて、勝利に繋がっている。それはクラブを応援してくださるファン・ブースターの皆様も同じだ。知らないところで全員が頑張っている。
そして、それが報われる瞬間がどこかで必ずある。
そんなことを全員で示した今日の勝利だった。
松浦なずなが、京都ハンナリーズに来てくれて本当に良かった。

取材・執筆 / 京都ハンナリーズ広報部 笠川真一朗
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KYOTO HANNARYZ




















