#033 全員の成長が嬉しい

前節のシーホース三河との敗戦から1週間が過ぎ、ホームに佐賀バルーナーズを迎えた一戦。
「何が何でも勝利を」。強い覚悟で挑んだ本日の試合は、終始、京都が佐賀を圧倒し、115-70という45点差の歴史的大勝を果たした。
数字だけを見れば圧勝であるものの、決して簡単な試合ではなかった。
相手は怪我による影響で数名のメンバーを欠く状態。こちらが優勢な状況ではあったものの、伊佐勉HCはそこに少しの不安要素を抱えていた。
「相手がメンバーを欠いている状況だからこそ難しい試合になります。精神的にも相手はがむしゃらに向かってくるし、こちらも気持ちが緩んだりすることも考えられます。そういう試合は本当に難しい。そこで相手に序盤でガタッといかれてしまったら、どうなるかわからない。想像以上に難しい」。
その言葉から今日の試合の難しさが伝わってきた。

しかし、選手たちは伊佐HCの不安を序盤から一気に吹き飛ばす。
前節の課題から得た学びを生かし、チームスタッフがしっかりと相手をスカウティング。選手たちはその準備にしっかりと応え、コート上で見事なパフォーマンスを発揮。
開始早々からスターティング5の選手たちが良い流れを作り、チーム全員が連動したオフェンスを披露し、ディフェンスでは佐賀の攻撃の芽を摘み取る。
そして、全選手がプレータイムを獲得し、攻守で奮闘。伊佐HCが掲げる「チームバスケットボール」を最大限に発揮して掴んだ勝利だった。
伊佐HCの表情から笑顔が溢れる。「ほぼほぼゲームプラン通りに遂行できた」と記者会見で選手たちに賛辞を送ると、試合後のロッカールームで全員に語りかけた。
「すごく難しい試合だったと思うけど、全員がやるべきことを集中して発揮してくれた。練習の成果がすごく出ていて、それがすごく嬉しい。それがゲームに繋がっていることを再認識して、また上手くなりましょう」。
今日一日で掴んだ勝利ではない。伊佐HCがこの言葉を放った時、昨シーズンのことを思い出した。


昨シーズンの最終節の長崎戦。伊佐HCは試合終了後、結果がふるわないシーズンに責任を感じ、チーム全員の前で涙ながらに「申し訳ない」と詫びたことがあった。
選手たちも思うことがあったはずだ。「もう、むーさん(伊佐HC)を泣かせたくない」。そう語った選手もいる。
日々、強い絆で結ばれているチームだが、その根っこには心の底から味わった悔しさがある。その悔しさを抱えて、オフシーズンから全員が課題と向き合って少しずつ成長してきた。そんなことを思い出した。
あれから、もう少しで半年が過ぎようとしている。
新たな大切な家族も加わり、チームの成長も加速した。伊佐HCは今のチームをどう思っているのか。
「自分の役割を全員しっかりと把握していて、それをどうやって努力して高めていけるか。
そこに対して練習でも試合でも、そして勝敗に関わらず、全員が毎日高いモチベーションを持って取り組んでくれています。毎日ちょっとずつ、ちょっとずつ上手くなっていて。本当に選手・スタッフ全員が成長している実感があります」。少し誇らしげな表情をしていた。

チームをファミリーとするならば、伊佐HCは、父のような存在だ。子どもたち(選手)の成長を率直にどう感じているのか。単刀直入に聞いてみた。
「正直、すごく嬉しいです。毎日、チーム練習もそうですし、個人のワークアウト、トレーニングに本当に色んなところで頑張っているのを見ていますから。
こういう厳しい勝敗の世界ですし、全員が報われるのは難しいかもしれないですけど、本当にみんな成長しています。
それは本当に嬉しいことですし、僕が良い形にその個々の成長を上手に融合させていかないといけないです。大変な職業ですけど、本当に毎日充実していますし、これからも全員が成長していくのを楽しみにしています」。
伊佐の優しい口調に、いつもチームや人への愛を感じる。

そして、そんなチームの姿を見守る村上直GMも充実感を口にした。
「試合が終わった直後に伊佐HCが、『みんなの練習の成果が試合に出て嬉しい』ってみんなに率直に伝える。そういう言動とか心遣いがすごく良いと思ってる。
チームとして努力してることと、個人で努力してること。一人一人が横を見て、チームメイトを見てるから、みんながそれぞれ頑張っていることをみんなが知っている。
だから試合でその努力が報われた時に、みんなが人のプレーでも自分のことのように喜んでる。ひとりの喜びが全員の喜びになっていて、それがすごく良いなと思ってる」。

「本当の家族になろう」。
今シーズンから「ファミリーファースト」をテーマとして掲げ、全員が意識することから始まった。最初はお互いに気を遣いながら。意識的に「家族」を体現しているように感じた。
それが、今はどうだろうか。
全員が頭で体現しているのではなく、心から自然に体現できている。誰かに言われなくても仲間を信じ、誰かに言われなくても仲間を支える。言われなくても人のために努力をする集団、組織に自然となっていた。
夏からの積み上げは、もうすでに全員の血となり、肉となり、骨となっている。
村上GMも胸を張る。「今さらこちらから何も言わなくても、深いところで繋がっている。嬉しいことは共に喜んで、悔しいことも共に悔しがる。課題に対してひとりで向き合わずに全員で向き合う。もうこのチームはとっくに家族になってるよ」。
雰囲気も良い。選手の故障もなく、成績も好調だ。
とはいえ、まだまだここからが本番。簡単に勝ち続けられるほど甘い世界ではないし、誰も満足していない。
ここからより良くなっていくために、何が必要なのか。最後に村上GMに聞いた。
「次はその家族に対して、より言いたいことが言えるコミュニケーションを築いていくこと。
耳が痛くなるようなことでも伝え合うこと。それもみんな絶対にできる。誰に何を言われてもスッと聞き入れることができる関係性は完成しているから、『もっとこうしようぜ』、『もっとこうやってくれよ、おれはこれ頑張るし』って言い合うことも大切。そういう部分ができたら、もっと力強さが生まれる。
言い合っても嫌な顔するような人間はこのチームにいない。だから大丈夫」。
家族を束ねる伊佐勉HCと村上直GM。
「本当の優しさ」を持った二人がいるからこそ、京都ハンナリーズは「家族」でいられる。

取材・執筆 / 京都ハンナリーズ広報部 笠川真一朗
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