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#037 信頼関係




「シーズンの中のひとつの勝利かもしれないけど、クラブにとっては大きな一勝だよ。みんなを誇りに思います」。
千葉ジェッツとのアウェーゲーム。伊佐HCは試合後に選手たちを称えた。
長年苦しめられてきた相手に102-79と23点差をつけた快勝。京都ハンナリーズが千葉ジェッツから勝利を挙げたのは2019年11月以来、約7年ぶりの快挙となった。
1Qからデメトレ・リバースやチャールズ・ジャクソンらが得点を重ねて主導権を握ると、澁田怜音が前半だけで4本の3ポイントシュートを沈め、一気に突き放す。
後半に入っても強度を落とすことなく、最後まで京都ハンナリーズのバスケットボールを展開。12選手全員が出場し、全員が得点を挙げ、勝利を掴んだ。


©B.LEAGUE

2019年の勝利はまだ村上直GMが現役の頃だった。試合後のホテルで村上GMを呼び止め、少しだけ話を聞いた。
「当時のことは正直あんまり覚えてない。でも、現役を退いてから今まで試合を見ていたけど、勝った記憶がないし、咋年も大差でやられていて。この試合に勝つことが、クラブにとってどんな意味や価値があるかはみんな思うところがあったはず。かなり嬉しかったし、泣きそうになった。相手チームの状況もあるけど、自分たちのバスケットボールを最後までやれたことが嬉しかった。選手もスタッフも本当によく頑張って、力を合わせて全員で成長してる」。
チームの奮闘を心から称えた。


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「特別な相手」と捉えていた千葉ジェッツ。戦績面や事業面でも常にリーグの先頭集団で走り続けるビッグクラブは京都ハンナリーズにとっても目標とするクラブのひとつだ。
そんなクラブに一年でも一日でも早く追いつきたい。そして、追い越したい。京都ハンナリーズはチームサイドだけでなく、フロントサイドも千葉ジェッツというクラブに対して特別な思いを持っている。
大差をつけられて敗れたこともあれば、残り数秒のところで勝ちを落とした試合もあった。それでも全員が目の前のことに全力で打ち込み続ければ、力を合わせれば、必ず報われる時がくる。そう信じて、前を向き続けてきた。
そしてこの試合も何度か流れを渡してしまいそうな場面もあったが、全員で踏ん張り続ける。悪い流れを断ち切るショットを決め続けた岸本隆一は、試合後にチームメイトを称えた。

「まさに理想的な展開でしたね。抑えなきいといけない部分をしっかりと抑えて、試合を通してずっと点数を取り続けられました。そこがめっちゃ良かったかなと思います。
3Qの僕が出ている時間帯で少し停滞してしまったかなという雰囲気があったんですけど、そこをマイキーだったり、百音だったり、オフェンスリバウンドで繋いでくれて、今後勝っていくためにはめちゃくちゃ大事になる部分を担ってくれました。あんまりフォーカスされにくい部分かもしれないんですけど、僕の中では今日の試合の中でも本当に大切な分岐点だったと思っています。
また新しい自分たちの試合の進め方ができたと言いますか。それがすごく良かったです」。
その表情からは充実感が伝わってきた。


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そして、そんな岸本に京都ハンナリーズに関わる全員の気持ちを筆者が伝えた。
「千葉ジェッツに勝つことができて、京都にいる社員もブースターの皆様も全員ものすごく喜んでいます。勝ってくれて本当にありがとうございます。ここで喜んで満足してはいけないと思っているんですけど、少し報われたような気持ちになりました」。
岸本は答える。
「僕はやっぱり加入してまだ時期が浅い分、今までの京都ハンナリーズの全てを汲み取ることは難しいんですけど、ただ、試合前も皆さんが『2019年から勝てていない』と仰っていたように、この過程の中で上手くいかなくても、ずっと本気でチャレンジを続けてきた選手、スタッフ、会社の方々がいたと思うんですよね。その方々に、報いるじゃないですけど、そういう勝利になったのかなと僕は思ってます。勝つことができて本当に良かった。またみんなで勝ちましょうね!」。
その笑顔は、とても眩しかった。


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そして、このクラブで数年間、もがき続けた男もいる。チームを率いるキャプテン、前田悟だ。
「コーチ陣が準備してくれたゲームプランをどの選手が出ても遂行できたのがすごく良かったかなと思います。
本当にベンチの雰囲気もすごく良いし、全員で流れを持ってこようとする雰囲気がすごく良い。
長いシーズン、流れが悪い時も必ずあると思うんですけど、これからそういう場面が来た時にもこういう雰囲気を継続できたら、辛い局面も乗り越えられると思いますし、マイキーが外国籍選手1人だけの時間帯もあったんですけど、あそこを全員で耐えられたっていうのはチーム力が上がっている証拠。全体的にすごく良い勝ち方でした」。
チームで掴んだ勝利に胸を張った。
そして、前田自身もチームを勢い付けるショットを決め続けた。
「シュートタッチが良かったんで、積極的に打ちに行こうと思っていました。前半はあんまり入らなかったんですけど、4Qに良い形で決めることができて良かったです。
ただ、今のパフォーマンスには全然満足していなくて、練習していることをもっともっと出せるようになったらさらに良い形になってくると思うんです。また次に向けて頑張ります」。


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一喜一憂せずに、前に進んでいく。今年の前田は良い意味でサバサバしている。
「千葉ジェッツという相手に対しての意識は正直あまりなくて。もちろんビッグクラブなので、勝ったら得られるものが大きいチームだと思います。でも相手云々よりも、いつも通りの自分たちのバスケットをやるだけだなと思ってました」。
油断せずに、慢心せずに、コントロールできることに目を向ける。前田はいつどんな状況でも冷静だ。この京都で年を追うごとに成長を遂げ、逞しい存在になった。
「勝利のカルチャーを築きたい。だから、京都に来た」。前田の目標は高いところにある。彼にとって今のチームはどう見えているのか。

「本当に見たまんま。見ているファン・ブースターの皆さんが感じ取っている通りのチームだと思っています。すごく良い雰囲気。
僕が個人的にすごく良いと思うのは、試合で出た課題を次の試合に生かしていて、コーチ陣が準備してくれて、「これが課題だよ」って練習して、その次の試合で改善できています」。
チームの状態の良さをありのまま伝えてくれた。

しかし、前田が言ったこのチームの魅力の部分は、簡単に再現できるものではない。どのクラブも対策を練ってくる中で、成長を続けていくことは非常に難しい。なぜそれができているのか。前田に質問をした。
少し考え、ゆっくりと口を開いた。
「信頼関係。信頼関係です、間違いなく。コーチ陣に対しての信頼もあるし、選手同士の信頼もあるし、賢い選手がすごく多いです。ミーチとかもすごいですよ。賢くて、チームでバスケットができる選手が本当に多い。これはすごく大きいです。それと、ここ数試合はスタートが良いので、後半に出てきた選手も「やらなきゃ!」っていう頭になっていると思います。
そういう良い連鎖が生まれていることで、どんどん良くなっています」。


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そして、ここから先、上へと登っていくために大切なことは何なのか。最後に聞いてみた。
「一喜一憂しない。目の前の相手に良い準備をして戦うことです。
今日勝ったから、次勝てるわけではないし、次の試合に向けてコーチ陣も準備してくれて、自分たちも最善の準備をして試合に臨む。勝つか負けるかが重要で、相手の状況は関係ないですけど、対戦相手に外国籍がいなかったり、今日も渡邉雄太選手がいなかったりとか、すごくラッキーなゲームも多かったと思うんです。
これからもっとon4を常に使ってくるチームとか、上位チームと対戦した時にどういうバスケットができるかっていうのが、本当にプレーオフに行って勝ち残るために大事なこと。

今日、怜音が後半出れなかったですけど、そこでステップアップする選手も必要ですし、チーム力で戦っていきたいです。
良い雰囲気を全員で加速させて、勝っていても負けていても全員で戦う。
それができれば浮き沈みのない力強いチーム、クラブになっていくはずです」。

明日の秋田戦も、何があっても壊れることのない信頼関係で勝利を掴む。





取材・執筆 / 京都ハンナリーズ広報部 笠川真一朗

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