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#048 昔の自分も今の自分も超えたい




昨日、東京サンロッカーズに惜敗を喫し、これでチームは3連敗。
しかし、前回の信州戦で浮き彫りになった課題を修正し、東地区の強敵を相手に最後までどちらに勝利が転ぶかわからない戦いを繰り広げ、チームとしての成長を見せた。
ここまで13試合を終えて、8勝5敗。決して悪い成績ではないが、目標のプレーオフ進出を見据えて、ひとつひとつの試合を勝ち切るために更なる成長が求められる。チームは今、各々の選手・コーチングスタッフが課題と向き合い、日々奮闘している。
決して絆は解けることなく、互いに前向きな言葉を掛け合い、勝利を掴もうとしていく姿に疑いはない。勝って学び、負けて学び、全員で目標達成に近づけるように。
昨日の試合後にも今のチームを象徴するかのようなシーンがあった。


©B.LEAGUE

試合終了後、ロッカールームに戻った選手たち。
伊佐HCをはじめ、コーチ陣がロッカーに入ってくる前に、副キャプテンの川嶋勇人がチームメイトに向けて話し始めた。
「ちょっとごめん!ひとつだけ。今日は勝てなかったけど、今年のこのチームはここで絶対に崩れへんチームやと思うし、お互いを信頼しあってもう一回ひとつになって、月曜日みんなで頑張ろう」。
決して長くない言葉だったが、その言葉には重みがあった。川嶋が試合後に全員の前で発言をしたのは開幕してから初めてのことだ。
東京からの帰りの道中、川嶋を呼び止めて話を聞いた。
「別にチームが崩れているとは思ってないけど、まだ試合は続いていくし、3連敗したままのぬるっとした感じで終わりたくないなと思って。もう一回みんなで信頼し合って頑張ろう、月曜日に勝ちを取ろう、という話をしたかった。
チームの状態が悪いわけじゃないけど、何か前向きになれるきっかけになればと思って。誰か一人が喋ったら、CJとかアンジェロも喋り出してくれたし、そういうきっかけになればいいかなと思った」。
その行動に川嶋らしさが詰まっていた。オンコート、オフコートでもチームがコミュニケーションを取りやすいように積極的に声を掛け、場を和ます。そして、必要な時には適切なアドバイスを送り、チームメイトの成長を助ける。ベテランとはどうあるべきか。川嶋に聞いたことがある。
「ベテランやからって周りに気を遣われたり、ベテランやからって偉そうにふんぞり返ったり、そんなことは絶対にしたくない。自分も若手の時、先輩に恵まれてここまで来れたし、直さん(村上GM)もそのひとり。ベテランこそ、チームが良くなるような潤滑油的な存在でいた方が、みんなもやりやすい」。
とにかく周りに気を遣わせない。同い年の岸本隆一もそうだ。誰とでも分け隔てなくコミュニケーションを取り、チーム全員が縦に繋がっているのではなく、横に繋がっている。それが、京都ハンナリーズの魅力だ。




以前、岸本が川嶋についてのイメージを話してくれたことがあった。
「あんな風にみんなの前でおどけたり、ふざけたりしてるように見えますけど、彼は周りに対しての気遣いが本当にすごい。簡単にできることじゃないなって思いますし、みんながやりやすいように立ち振る舞っているんだろうなって尊敬しています。ここまでちゃんとキャリアを積み重ねて、当然バスケットでも実力者。移籍してきて何もわからない僕がみんなとコミュニケーションを取れたり、スッと入っていけるようになったのは彼のお陰です。とても感謝しています」。そう話していた。







ロッカールームでの話に戻る。
川嶋がチームメイトに話をした後、岸本が「やろう!やろう!」とチームメイトを鼓舞した。
そしてチャールズ・ジャクソンも口を開いた。「月曜日も試合がある。ホームだ。そこで勝ちを取ろう。今日はグッドファイトだった」。と声を掛けると、アンジェロ・カロイアロもチームメイトにメッセージを伝える。「今日の試合も大半の時間はリードしていたし、自分たちのバスケットボールができた。自信を持とう。自分たちは良いチームだから」。
川嶋の周りには人が集まる。まさにそんな光景だった。連敗が続く今、この苦しい状況だからこそベテランが率先してチームを盛り上げる。そして、川嶋本人もまだまだ成長の途中にいる。その姿勢でチームを導く。

「序盤の好調の要因は間違いなく怜音(澁田)の存在があったから。その怜音が怪我してから、隆一(岸本)のプレーメイクに頼りすぎている。
隆一は自分の責任としてチームを背負ってる。隆一は『活躍したい、点取りたい』とかそんな浅はかな考えじゃなくて、本当にチームを勝たせたいっていう責任感で頑張ってる。それは見ていたら伝わるし、だからこそもっと僕を筆頭に他の選手もステップアップしないといけない。試合に出た時に自分らしさは表現できているけど、チームが勝てるようにもっとやらないといけないことがある。みんな頑張ってるし、頑張っているからこそ勝ちたいって純粋に思う」。
引き締まった表情と口調から熱い気持ちが伝わってきた。





試合後、川嶋は伊佐HCに呼ばれ、二人で話をしていた。長くはない会話だったが、これもあまり見られない場面だった。
「簡単に言えば、『もっとやっていいぞ』というような話。すごく気合いが入った。本当に、チームが今こういう状況だからこそ、自分が昔の姿に戻るしかないと言うか。昔の自分も今の自分も超えてやろうって思ってる。これだけ素晴らしいチームメイトに恵まれて、新練習場も完成して、色々苦労もあったけど、これだけ長く良い環境でバスケットボールができて、こんなに幸せな人生はない。毎日幸せ。だからそれに感謝して、みんなのために頑張りたい。勝ったり、負けたり、色んなことを経験をしてまだまだ成長したい」。
その目は本気だった。
若手に負けないエネルギーと川嶋が持つ経験値。彼にしかないものを武器に、悩める若手たちに寄り添いながら、チーム全体を上へ上へと引っ張り上げる。

今、川嶋勇人の全盛期が始まろうとしている。




取材・執筆 / 京都ハンナリーズ広報部 笠川真一朗

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